それでもあなたは愛を選ぶのか - SF映画の概念を覆す傑作 :
映画『メッセージ』

面白かったモノ / 映画 ・ 2021.07.02

モノとコトの映画レビューは、ネタバレなしでお送りいたします。

この映画、2017年のマイ・ベストムービーです。ナカトミツヨシ(@meganetosake)です。

SFで、正体不明の何かが地球にやってくる映画です。言ってしまうとそうなんですが、この映画の描くところは、今までのそれらとは全く別物だと思ってください。正直、当時映画館で見終わった瞬間は震えていました。とんでもない、これは今までのSF映画の概念を覆す作品だぞ、と。

地球に飛来した物体の姿があまりに「ばかうけ」に似ていたので、違う意味でも日本で話題になった今作。形而上学的なラスト(そういうところはしっかりSFなんだよね)なので、私の解釈を語りたくなってしまうのを抑えつつ、ネタバレなしの範囲でお伝えできるレビューをお届けします。

あらすじ

突如地上に降り立った巨大な宇宙船。謎の知的生命体と意思の疎通をはかるために軍に雇われた言語学者のルイーズは、物理学者イアンとともに、“彼ら”が人類に何を伝えようとしているのかを探っていきます。そして、その言語の謎が解けたとき、彼らが地球にやってきた驚くべき真相と、人類に向けた美しくもせつないラストメッセージが明らかになるのです。

一旦、今までのSFは片隅へ

作中、何度も思い知らされました。いかに私が「SFってこうだよね」という認知に囚われていたか。この作品は、そんなSFの概念をことごとく覆していきます。公開されている範囲でも例えば宇宙船の造形。日本では「ばかうけ」っぽいと言われちゃいましたが、今まで見たこともないフォルムとミニマルな作りです。

その他にも驚きのビジュアルが多々あるのですが、見た目だけではなく、作品の雰囲気やストーリーの展開でも、とにかくSFの概念を覆していきます。そうして見終わった感想は「それでもSFだった」んです。今までのSFとは一線を画す、まさに新時代のSFが訪れた瞬間でした。

知る中では一番静かな宇宙からの来訪映画

そんな、今まで見たことの無い新しいSF映画と、私はコミュニケーションを取り始めるのですが、作中の主人公も謎の知的生命体とコミュニケーションを図り始めます。それは比喩ではなく、言葉の通り「言語学」的な側面から、全く会話の通じない相手の「言語」を学び、こちらも「言語」を教えてちゃんと「対話」で意思疎通を図ろうとします。もはやいきなり異星人に侵略されたり、ドンパチ始める時代では無いのです。

サピア=ウォーフの仮説というものをご存知でしょうか。簡単にいうと”話す言葉”が、その人の考え方や思想へ影響を及ぼすというもの。母国語以外の言語を覚えると考え方が変わったりすると、作中の会話でも取り上げられているのですが、その相手がもし、謎の知的生命体だったら…そんな、静かだけど好奇心も刺激され続ける稀有な物語展開がもう、たまりません。ずっと深海を漂っているような絵作りもまた、その静寂感を彩ります。

そんな静けさを盛り上げるのが、我々人類です。なんと宇宙船は1つではなく12個、しかもさまざまな国へ到着します。日本は北海道へ来たみたいですね。(多分、類似性も多い『コンタクト』という映画の重要な土地が北海道だったのが関係してそう)

各々の国が独自に”彼ら”からのメッセージを解読していくのですが、さまざまな思惑が入り乱れて、お察しの通りゴタゴタしていきます。それは国際的な問題だけでなく、国内でも社会をあらぬ方向へ持っていってしまいます。まさに現代社会の状況を風刺するようなエッセンスもあり、静かな中にも、エッジとメリハリの効いた展開が最後まで続きます。

それでもあなたは愛を選ぶのか

突然何を言い出すのかと思われたかもしれませんが、これがこの映画のもう一つの顔。それだけでも何か一本作れそうなほど濃厚な人間模様を描いたヒューマンドラマの側面もあるんです。

こればかりはネタバレになってしまうので、ぜひ映画をご覧いただきたいのですが、主人公は「ラストメッセージ」と共にとある決断を迫られます。その決断の果ての彼女の想いを想像すると、本当に、自然と涙が流れていました。

そしてその決断は、我々にも向けられている気がしました。生命ってなんだろう、時間ってなんだろう。人生って、なんだろう。そんな、”今”を生きる人類の我々にはまだ計り知れない、形而上学的な問いかけもたっぷり楽しめる骨太SF&ヒューマンドラマ。今持てる感覚と知能をフル稼働して、目には見えない、触れることもできない深淵に少し、かすったかも?という感触は、私がオールタイムベストにも挙げている『2001年宇宙の旅』に迫るものがあるかも…そんな刺激的な映画でした。

ラストメッセージを受け取ったら是非語り合いたい

おそらく私の持っている想いは「解釈の一つ」なんですよね。だから、是非皆様のラストメッセージも聞いてみたい。おそらく色んな考えが存在すると思うんです。モノとコトの映画レビューではネタバレなしなのですが、どこかでちょっと、ネタバレありの想いだけぶちまける場所、作ってもいいかもしれませんね。

更新日 :2021.07.02
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