これはぶっ飛びつつ原点回帰した、あの頃のワイスピだ :
映画「ワイルド・スピード / ジェットブレイク」

面白かったモノ / 映画 ・ 2021.09.03

モノとコトの映画レビューは、ネタバレなしでお送りいたします。

あれ、すごくよかった。ナカトミツヨシ(@meganetosake)です。

ワイルド・スピードといえば、作品数を重ねるごとに荒唐無稽な描写がグレードアップしていく(褒めてます)夏の風物詩として、欠かさず観ていた作品だ。ただ最近はその荒唐無稽さがぶっ飛びすぎてもはや、最初の頃のテーマや作風は形骸化していたように思う。それよりもいかにぶっ飛んだ設定が出てくるか、楽しみにしていたところもある。

それが、華麗に原点回帰。かつ、荒唐無稽さもぶっちぎるという絶妙なバランスで登場してきたものだから、驚いた。毎回「よかった」とはなるのだが、今回は「すごく、よかった」。

あらすじ

ドミニクはレティと幼い息子のブライアンの3人で静かに暮らしていたが、ある日仲間のピンチの知らせを聞く。ローマンら“ファミリー”と合流したドミニクは、現場で世界中のコンピュータ・システムを操る装置を見つけるが、突如襲撃者が現れ、装置を奪っていったのはなんと弟のジェイコブだった。凄腕の殺し屋で一流ドライバーであるジェイコブは、実は某国の独裁者組織の一員で、ドミニクたちは世界を震撼させる陰謀を止めるため動き出す。対立する兄と弟…明かされるドミニクの過去…果たしてファミリーの運命は?!

しっかり原点回帰した「ワイルド・スピード」

最近の荒唐無稽さの原因は、やはり政府の秘密組織のトップである“ミスター・ノーバディ”との出会いだろう。「犯罪集団」だった主人公たちは、政府の仕事をこなしていくうちに「ヒーロー」に近い像となる。そして資金も潤沢、車も選び放題となり、当初の「カスタムカーをテーマにした走り屋文化+犯罪潜入アクション」が「ジェームズボンド並みのスパイアクション」と化した。そりゃ、やりたい放題にできてしまう。辛うじて残っていた「ファミリー」の要素も、どちらかという新ファミリーの参戦に応じて、その中で描かれるものが多かった。

まぁ、それはそれで面白いと思っていた私のようなファンが多かったのだろう。

しかし今回は“ミスター・ノーバディ”からの救援要請から物語は始まる。今までのように、直接的な援助が受けられない状態なのだ。なので人とのつながりや、旧友(過去作品の人たち結構出るので予習した方が楽しめるかも)のツテを駆使、足りない装備は敵から奪うスタイルで挑むことになる。

また今回の物語では、主人公ドムの過去にスポットライトが当てられている。ドムが犯罪稼業に足を踏み入れるに至った経緯、そしてレーサーだった父親の事故の真相を巡りながら、見応えのあるドラマが展開していく。スーパーヒーローではなく、家族を守るためにできることを、全力でやる。まさにあの頃のワイルド・スピードだ。

でもちゃんと荒唐無稽さもグレードアップ

しかし荒唐無稽な描写(褒めてます)はあの頃のワイルド・スピード…ではない。このバランスが「ワイルド・スピード / ジェットブレイク」では見事だった。予告編にも登場している「磁石」を使ったアクション、すでに凄いんだけど、本編はあんなものではない。今までの映画でも磁石を使ったアクションは数あれど、「ワイルド・スピード / ジェットブレイク」ではその密度が違う。あそこまでやり切った映像は正直観たことがなく、もはや凄すぎて笑ってしまったほどだ。

車のカスタム(ほぼ魔改造)さも群を抜いていた。もはや車である必要がなさそうな気もするが、ストーリー的には破綻していないギリギリのラインまで車を改造する。その到達点は過去作品で随一だろう。荒唐無稽という意味では磁石に負けず劣らず、こちらも思わず笑ってしまうレベルだった。

しかし荒唐無稽さだけが際立っていた過去作品とは、今作は趣が違う。それはやはり物語の濃さ故なのだろう。物語もアクションも追求したおかげで、リーズ最長の2時間25分という長尺になっているのだが、全く「長い」とは感じないほどの濃密な作品だった。アクション映画はどうしても「アクション」へのウェイトが高まりがちだが、久しぶりに「物語」とのバランスの取れた作品を見た気がする。

逆に純粋なド級アクションは、デッカードとホブス捜査官がタッグを組んだスピンオフ「ワイルド・スピード / スーパーコンボ」の続編などで、追求する流れでもいいのかなとも、ちょっと思った。

ゴールまでの最後のカーブのような作品

実は「ワイルド・スピード」シリーズは、あと2作品で完結することが明言されている。そういう意味でも今作は、原点回帰で「ワイルド・スピード」に戻りつつアクションも洗練させるという、ゴール前の最後のカーブのような作品だったように思う。今作のタイミングでこのバランス感を整えられたのは、大きな意味があるだろう。こうなったらあとは、直線をアクセルベタ踏みで走ればいい。そんな、完結までのとてもいい道程が見えた作品だった。

「ワイルド・スピード」シリーズの過去のキャラクターも多く登場した本作、忘れてはならないのが、事故で亡くなってしまった俳優ポール・ウォーカー演じる、ブライアン・オコナーの存在。彼の存在無くしてこのシリーズは語れないのに、最近の作品で触れられることが少なかった気がする。そんな彼の存在が、本作ではしっかり描かれた。それだけ「ワイルド・スピード」シリーズとしても、大きな意味を持つ本作。ラストスパートへ向けて、ぜひ観てもらいたい作品だ。

更新日 :2021.09.03
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