写真家が何を想い、何を見ているのかが垣間見える :
写真からドラマを生み出すにはどう撮るのか? 写真家の視線

何を撮ればいいか分からなくなっていた私が、もう一度写真を撮りたくなった本。ナカトミツヨシ(@meganetosake)です。

あの時は、写真の技術書にあてられていたと思う。どうしたら綺麗な写真になるのか、何をしたら見栄えのする空気を撮れるのか。理詰めで考えすぎて、逆に何を撮ったらいいのか分からなくなっていた。

そんな時に出会った本。写真作家・フォトグラファーである高橋伸哉さんの、まさに「写真家の視線」とも言える、いったい彼が何を考え、何を求めて写真を撮っているのか、その心境がダダ漏れのちょっと珍しいタイプの本だ。

この本は正解を導き出すタイプの技術書ではない。写真家・高橋伸哉さんの目と心を借りる本だ。もちろん知識として技術書に書かれているような内容は知っておいた方がいい。ただそれに囚われていた私には、救いのような本だった。

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「写真家の視線」を垣間見れるエモーショナルな本

光や視線、色…写真にはさまざまな要素がある。その要素をどのように組み合わせて、どのような想いで撮ればドラマを生み出す写真になるか。この本ではそれを、技術書よりはエモーショナルに、ただ作品集よりは具体的に書いている。作例ごとに挟まれるコメントも、カメラで切り取った瞬間の情景や、冬の機材に触る手の冷たさまで伝わってくるほど心を裸にして書かれている。

この「エモーショナル」な部分が、実は写真にとって本当に大切。写真は、撮る人の想いや人生が写る。それを表現するためのツールがカメラであり技術であって、まずは自分は何故その写真を撮りたいのか、どうしてその瞬間を切り取ったのか、そんな心が動いた瞬間が大切だったはずなのだ。そういう「心が動いたもの」を探す視点さえ、だいぶ見えなくなっていたのだと実感した。圧倒的に視野が狭かった。

例えば私は、曇りの撮影が嫌いだったし、いい写真が撮れないと思い込んで避けていた。ただこの本の中で、曇りだ!と(顔は写っていないが)目を輝かせワクワクしながら撮影する高橋伸哉さんの気持ちを覗いたら、そう言う視点もあるのか…と思わず曇りでの撮影がしたくなっていた。それだけ視野が狭くなっていた私には、今一度何を切り取って「写真」とするのか、考え直すきっかけになった。

幅広いシチュエーションのEXIFと機材情報

作例には、機材情報やEXIF(写真を撮ったカメラ機種名やレンズ名、絞りやISO感度といったカメラの設定、編集に使ったソフトウェアなどさまざまな情報を含んだデータ)も惜しげもなく公開しているのだが、そのシチュエーションや機材が本当に多岐にわたっている。プロ向けからコンシューマー向けまで、ブランド問わずさまざまなカメラとレンズを使った作例が怒涛のように並んでいるのだ。中には写ルンですなんかもある。

逆にちょっと知識のある人向けかもしれないが、このEXIF情報がとんでもなく勉強になる。技術書には読者の技術レベルに応じたターゲットが設定されがちで、EXIF情報が意外と偏っているように思う。この本にはそれが無く、横断的でフラットな情報はさまざまな撮り方や機材を試してみたくなる魔力がある。ちなみにこの本を読んでから、いくつかフィルター類を購入してしまった。沼の素質がある方は注意。

特典のLightroomプリセットはありがたく分解・研究

この本、ここまでの内容でも個人的には大満足なのだが、DL特典としてなんとLightroomプリセットがついてくる。それも3種類も。この本を読むまでは、Lightroomプリセットがついてくると聞けば「わーい、最初からいい感じの色を試せるー!」くらいの気持ちだっただろう。

高橋伸哉さんは本書で、Lightroomプリセットはカーブなどをどのように設定するとその色や空気感にになるのか、細かく分解・研究するべきだと書いている。当たり前だ、他人のプリセットを使っているだけではいつまで経っても自分の色にならない。

しかしその「当たり前」さえ、ちょっと見えなくなっていたかもしれない。気軽に、手軽にな方向に偏っていたなと反省した。特典のLightroomプリセットもものすごく良い雰囲気だったのだが、そのまま使うことはせず存分に研究させていただいた。プロのLightroomプリセットをここまで分解して研究できるなんて、結構すごいことだと思うんですよね。

今までチャレンジしてこなかった写真も撮ってみようかな

思えばこの本を読んでから反省ばかりだ。そういう気付きにくくなっていたところにもう一度視点を当てられるきっかけが、本書には散りばめられている。そして今一度、写真のことが好きになれたと思う。

撮るものも、だいぶ偏っていたように思う。でも世界はもっと撮るべきもので溢れているはずだ。「思わず曇りでの撮影がしたくなっていた」と書いたが、まさにそういう、今まで撮らなかったり避けていたような写真も「そういう視点で撮るならとてもいいかも」と思えてくるアイデアと想いの熱量が、この本にはある。写真に煮詰まってしまった人や、新たな視点を求めている人にはうってつけの本だと思う。

私はこの本を読んでから視野の狭さに愕然とし、今は肌身離さずカメラを持ち歩き、心の赴くままに写真を撮るようにしている。これも今まであまりやってこなかった、所謂スナップ写真だ。まだ思うように撮れてはいないが、これがとても楽しい。また一歩、写真と友達になれた、そんな気がしている。

P.S. 紙の本っていいよね

ちょっと余談だが、実はこの本、表紙のカバーを捲ると…

写真からドラマを生み出すにはどう撮るのか? 写真家の視線

とても目を引くシルバーの装丁になっている(銀塩から来てるのかな)。また大写しの写真がページをめくる動作とともにゆっくり現れるようなレイアウトがとてもステキ。正方形に近いサイズは置いていても絵になる。

写真からドラマを生み出すにはどう撮るのか? 写真家の視線

電子書籍全盛期だけど、紙の本っていいよね。って思える本って、いいよね。

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写真からドラマを生み出すにはどう撮るのか? 写真家の視線

2021年
写真
更新日 :2021.08.04
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